日本IVR学会総会

明日から日本IVR学会総会です。今回は

【子宮腺筋症に対するポンピング法ゼラチンスポンジ使用によるUAE】

という演題名で口演します。

【目的】ポンピング法にて作成したゼラチンスポンジを塞栓物質とした子宮腺筋症に対するUAEの治療効果を検討。


【方法】2003年から2009年まで当院にてUAEが施行された子宮腺筋症82例のうち筋腫合併を除く37症例を対象。塞栓物質は充分にポンピングしたgelformのみ。塞栓の程度はDSA上子宮動脈水平枝が描出されなくなるまでとした。UAE施行時の年齢は29-52歳(平均42.9歳)、経過観察期間1-71ヶ月(平均20.8ヶ月)。UAE前後のMRI画像、臨床症状、FSH、CA125を検討。

【成績】両側子宮動脈塞栓36例、両側および右卵巣動脈付加塞栓1例であった。

全例でUAE後48時間以内の退院が可能であった。

UAE後1ヶ月の造影MRIにて腺筋症病変の梗塞領域を検討したところ、完全梗塞23例(62.2%)、50-99%梗塞9例(24.3%)、50%未満梗塞5例(13.5%)であった。全例でUAE後から月経痛、過多月経等の臨床症状は改善されたが経過観察中5例で症状再燃が認められ、症状再燃までの期間は3-36ヶ月(平均15.6ヶ月)であった。再治療が4例(ATH:1例、GnRHa:3例)に施行された。UAE後の無月経は6例(一過性:2例、閉経:3例、子宮性:1例)でUAE施行時年齢はいずれも45歳以上であった。CA125の低下は梗塞領域とよく相関した。

【結論】ポンピング法ゼラチンスポンジによるUAEは子宮腺筋症に対して有用で安全な方法と思われた。

以上が抄録です。
 
何が言いたかったかというと、子宮腺筋症は子宮筋腫を合併することが多く、筋腫合併の腺筋症に対するUAEと筋腫を合併しない腺筋症とでは治療効果が違うのではないかという疑問を解決するための検討です。
 
結論としては腺筋症単独の場合でもゼラチンスポンジのみのUAEでも充分に治療の選択肢になりえると言うことです。

筋腫を合併した腺筋症でも充分治療効果があることは先の日本医学放射線学会総会で口演しました。

グラフから子宮腺筋症単独の場合でも3年で70-80%、5年で70%弱の患者さんが症状コントロールされていると言うことになります。

府中恵仁会病院UAEセンター

5月10日より診療を開始し、おかげさまをもちまして今月の外来予約は一杯となり、またUAE施術予定も5月は一杯となりました。

予想以上の受診、UAE施術数となりスタッフは急に大忙しとなってしまいましたが患者さんには満足して頂けるようにやって行きたいと思います。

UAE後の卵巣機能(3)

上のグラフは45歳以上の子宮腺筋症のUAE後のFSHの推移です。UAE前よりFSHが高く閉経が近いと予測される例もあることがわかります。45歳未満のグラフと比較するとまったく違っていることがわかります。45歳を境に女性は閉経に向かうということが理解できると思います。ところがまったくと言っていいほど安定している例もかなりあることがわかります。

以上のデータから私はUAEを受ける患者さんに“45歳以上の場合は10%程度の確率で閉経が早まるか、そのまま閉経になります。45歳未満の場合はそういった心配をする必要はほとんどありません”と説明しています。

UAE後の卵巣機能(2)

UAE後の卵巣機能をHPにリンクしました。関心のある方はタイトルをクリックしてください。

UAE後の卵巣機能(1)

UAEの合併症の一つに卵巣機能低下(不全)というのがあります。平たく言うと卵巣の働きが衰えて閉経になるということです。いくらUAEが筋腫や腺筋症に対して有効であるといっても卵巣機能の低下をきたしていたら受け入れられません。 卵巣機能を評価するのには基礎体温をつけてそれを解析することが一番なのですが、原則挙児希望がない女性にUAE前から基礎体温をつけさせるというのはいささか無理があります。そこでFSH(卵胞刺激ホルモン)という脳下垂体から分泌されるホルモンを測定します。E2(エストラジオール)はエストロゲンの一種ですが、変動が大きいのであまりあてになりません。比較的安定しているFSHを測定します。このグラフはUAEを施行した子宮腺筋症74症例のうち45歳未満35症例のFSHの推移です。ほとんどの症例でFSHが安定しているのがわかります。1例のみUAE後1年以内にFSHの一過性上昇が認められました。また2年後に一過性に上昇している例が1例ありました。この2例はUAE施行時の年齢は44歳でした。つまり、45歳未満の場合UAEを受けても卵巣機能は保たれると解釈していいと思います。

                             

子宮腺筋症に対するUAEの治療効果を検証する(3)

腺筋症に対するUAEの治療効果は自分なりにずいぶん検証し、臨床にフィードバックし成績を向上させようと努力してきました。

76例の腺筋症に対する症状コントロール率を梗塞率によらず検証してみました。 次のように定義しました。

1. 月経痛があっても軽くて薬は必要ない、もしくは市販の痛み止めを1-2回飲めば充分程度の場合は症状コントロールされているとみなす。
2. 閉経になった場合、月経が来なくなった時点で経過観察を中止とする。
3. 症状によらず、他の治療(ホルモン療法、手術療法)を受けた場合、その時点で症状コントロールされないと定義する。

なぜ3.があるのかですが、症状の再発はありませんでしたが、MRI画像で完全梗塞でない例があり、前もってホルモン療法を行えば症状コントロール期間が延長するのではと考え、GnRHaを施行した例があるからです。つまりホルモン療法が治療に介入したため、症状再発(本当はしていないが)と辛めに扱ったわけです。

そうすると次のようなグラフになりました。



これが2003年-2009年までの腺筋症に対するUAEの症状コントロール率ということになります。
平均して3年ならば85%以上の患者さんが、5年でも75%程以上の患者さんが再発したとしても痛み止めを飲む程度の再発であって症状がコントロールされるということになります。

子宮腺筋症に対して初めてUAEを行ったのが1999年でした。2003年より系統的に行い始めて7年が経過しています。ということはこれだけの事がわかるまでおよそ10年かかったことになります。またこれだけのことがわかるという仕事の場を葉山ハートセンター関係者が私に与えてくれたということになります。感謝しなくてはいけませんね。