巨匠に学ぶ

UAEを含む血管内治療だけでなくあらゆる手技・手術は楽器の演奏に似ています。私は5歳よりヴァイオリンを習い、いまでも時々楽器に触れます。

共通していることは基本がもっとも大切ということです。ヴァイオリンの巨匠ヤッシャ・ハイフェッツは、3オクターブのスケールを弾かせれば技量がわかるといっています。音階が基本であり音階をきちんと弾けるかどうかということです。

興味深い実話があります。ユーディ・メニューインという天才ヴァイオリニストがいました。10代前半でベートーベン、ブラームス、バッハの協奏曲をオーケストラと共演するほどでした。
その10歳そこそこのメニューインは母親に連れられて当時の巨匠、ウジェーヌ・イザイの元にやってきました。ウジェーヌ・イザイはヴァイオリンの皇帝といわれたほどの巨匠でした。当然多くの若き天才ヴァイオリニストが皇帝の下にレッスンを受けにやってきました。

イザイは幼少のメニューインがブラームスやチャイコフスキーの協奏曲を非常な完成度で演奏できることには関心を示さず、まず、3オクターブの分散和音を弾いてほしいといいました。

メニューインはこれができなかったのです。これでレッスンは終了で親子は逃げるようにイザイの元を去っていったと伝えられています。ヴァイオリンの愛好家であれば後年のメニューインの演奏がどうであったか知っていると思います。

外科手術はアッぺにはじまりアッペに終わるといいます。

UAEをはじめとする血管内治療でもきちんと穿刺ができ、シース、カテーテルを挿入することができ、確実に止血ができるという基本中の基本が大切です。

卵巣動脈付加塞栓は有意に卵巣機能低下を起こさない

子宮筋腫のUAEでまれに卵巣動脈も塞栓しなければならないときがあります。卵巣は主に卵巣動脈から栄養されているので卵巣動脈塞栓を行うと、通常の両側子宮動脈塞栓よりも卵巣機能が低下してしまうのではないかと理論上は危惧されます。

私の経験上は卵巣動脈付加塞栓を行っても有意に卵巣機能は低下しませんでした。

2011年の5月にJournal of Vascular and Interventional Radiologyという医学雑誌からこれを支持する論文が出ました。


Menopause and Menopausal Symptoms after Ovarian Artery Embolization: A Comparison with Uterine Artery Embolization Controls
    (卵巣動脈塞栓後の閉経・閉経症状:子宮動脈塞栓との比較検討)
 
                    Conclusions


Compared with standard UAE, the addition of OAE does not appear to precipitate the onset of menopause nor increase menopausal symptom severity.
(通常の子宮動脈塞栓術と比較して卵巣動脈付加塞栓が閉経・閉経症状を引き起こすということはない。)


この論文によると平均年齢がほぼ同じである、51名のUAE+卵巣動脈塞栓と49名のUAEを比較してみたところ、卵巣機能低下症状の出現率には有意差を認めなかったということです。
 
私はUAEを行う患者さんの卵巣機能の指標としてFSH、LH、E2は必ず測定しているのですが、卵巣動脈付加塞栓を行った患者さんが有意に卵巣機能低下を起こしていませんでした。
 
私は以前、卵巣動脈付加塞栓を行ったUAE症例の卵巣機能について学会で報告したことがあります。 http://home.netyou.jp/aa/uae/newfile16.htm
 
欠点としては、当たり前なのですが手技時間が長くなり透視時間も長くなるということなのですが、卵巣動脈付加塞栓でも16分程度の透視時間なので問題にならないと考えていました。
 
今回の論文でも、通常の子宮動脈塞栓を行った場合の平均透視時間が14分で子宮動脈塞栓に卵巣動脈塞栓を付加した場合20分と多少延長していますが、問題にしていません。
 
タイトルをクリックすると抄録を読むことができます。

,,UAE失敗しました,,,

「○○でUAE、失敗しました。」

というメールを数年前にもらったことがあります。
海外でUAEを受けたという日本人からのメールでした。メールによるとUAEを行ったあとも血の塊のようなものが出ており過多月経や貧血が改善されておらず白血球も増加しており感染をしているのではないかと心配しているという内容でした。血の塊のようなものが出るので過多月経が改善されていない、つまり筋腫が梗塞になっていないのではないか、おまけに感染症をきたしたのではないかという内容です。現地では担当医に診てもらうもののはっきりした回答が得られないと言うことでした。

私は診察をしていないのでなんともいえないが、一時帰国して受診されればどういった状態なのかは説明できますと返信しました。

はたして受診されて造影MRIを撮影したところ筋腫はいずれも完全に梗塞になっていました。
ただ筋腫の一部が粘膜下から子宮内腔に脱落し、いわゆる筋腫排泄の状態になっていました。

私は筋腫はすべてきちんと梗塞になっているのでUAEの手技そのものは成功しています。ただ一部がすこしづつ排泄されていますのでその際に血の塊が一緒に出るのです。大きな筋腫ではないので感染をきたすこともありません。この症状はまもなくなくなります。

と説明しました。

患者さんは安心されて帰国されました。 しばらくして、今まであった症状はなくなり快適に生活していますとメールが来ました。

この国ではUAE後に造影のMRIで評価をしなかったようです。もちろん経過を診ているうちに良くなることは判っていたのかもしれません。でも患者さんは不安になります。この不安を取り除くことも重要です。

同じようなことが最近ありました。在日外国人の患者さんで母国でUAEを行ったのですが、日本に戻ってからどうも調子が悪いというので受診されました。
造影MRIを撮ると筋腫は完全に梗塞になっていましたが、子宮内腔に脱落し、筋腫分娩になっていました。可及的に切除しました。

本国ではUAE後に筋腫分娩となる可能性については説明がなかったそうです。

私はUAE後に筋腫分娩をきたす可能性があるのかないのか、あるとすれば何%程度か、またいつ頃に来たすのかも説明しています。またUAE後は造影ー単純MRIではありませんーMRIを撮ることによって筋腫分娩を来たす兆候も説明しています。

UAE後の造影MRIは必須の検査なのです。

ベストアンサー

ネットを見ているとUAEに関する質問も目に付きます。

yahoo知恵袋というのがあります。

私自身このサイトで回答したことはありません。 私宛てに来たメールに関しては全て回答しています。

知恵袋でベストアンサーというのがありますがUAEに関していったい誰が判断をしているのでしょうか?

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子宮筋腫でUAEを受けた方の術後の体調を教えて下さい。


現在ホルモン療法(月1回の注射)を受けていますが、閉経が近い年齢なのでこのまま点鼻を追加して様子を見るか手術をするか、選択を迫られています。
手術だと子宮全摘になるそうなので、UAE(子宮動脈塞栓術)も考えていますが、「卵巣機能に支障が出る場合もある」等のリスクを考えると、簡単には決心できかねます・・・
そこで、UAEを受けた方に質問です。 術後の症状・術後の体調を教えていただけないでしょうか?
よろしくお願いいたします。http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1030128780
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閉経が近いと判断されているようなのでそのままホルモン療法(リュープリンの注射)で経過を診るのがいいと思います。リュープリン開始前にFSHを測定し上昇傾向が認められたのであればリュープリンで閉経に逃げ込める可能性が高いと思われます。

逃げ込めなかった場合にUAEや全摘もしくは再ホルモン療法を検討すればいいと思います。全摘を避ける努力をしてきたようですので全摘よりUAEがよいかもしれません。UAEは子宮喪失による精神的影響がありません。これがメリットになります。現状(ホルモン療法中の状態)が不快でないならホルモン療法をまた行うことも選択肢です。手術は最後の手段にすべきです。

卵巣機能に支障が出る、、といわれますが、この場合は閉経ですのでリスクにはなりません。リュープリン投与中も人工的に卵巣機能を低下させており卵巣機能に支障をきたしているのです。
子宮全摘も厳密には卵巣機能低下をきたす場合があります。いずれにせよあえて卵巣機能を心配する必要はありません。

術後の体調はUAE後48時間で帰宅、デスクワークは1週間後、運動や長期の旅行は2週間後から普通にできます。
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私なら上記のように回答します。

米国のライス長官がUAEをお受けになったのは50歳でした。50歳なら閉経が近いしGnRHaで逃げ込める可能性もあったはずです。でも彼女はUAEを選択されました。もしかするとライス長官はUAEを受ける前にGnRHaを何クールかお受けになっていたのかもしれません。逃げ込めなっかたのでUAEを選択されたのかもしれません。
患者さんの背景はそれこそ千差万別です。

私は以前50歳のUAEを引き受けたことがあります。外来では50歳なのだから閉経も近いしGnRHaでいいのではないかと話したところ患者さんはこう言いました。

『以前の病院でもそう言われてGnRHaを注射しました。でもすごい鬱症状が出るのです。死にたくなるほどの鬱状態になるのです。』

私はUAEの適応としました。

UAE後、その患者さんは過多月経、貧血が完治してとても生き生きとしておられました。

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子宮筋腫の治療法について質問です。


現在40代半ば。
婦人科で検診を受けたところ、大きいのが1つ(6cm)あとは大小あわせて約20個の多発性子宮筋腫、子宮全摘と言われました。
極度の貧血と出血過多に悩まされているので治療をしたいのですが、仕事をしているためホルモン治療や全摘には抵抗があります。
そこで子宮動脈塞栓術(UAE)を考えています。
東京だと山王病院や府中UAEセンターが有名ですが、コチラの病院で治療を受けた方、いらっしゃいましたら情報提供をお願いします。

入院期間
費用(全額自己負担)
手技後の痛み
病院の雰囲気
予約の取りやすさ
よろしくおねがいします。
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yahooの知恵袋に私がUAEをさせていただいている病院の名前が出るとは光栄ですね(笑)。

私ならばこう回答します。

最大径6cmであれば粘膜下にあったとしても筋腫排泄が起きた場合sloughingになりませんので
感染する可能性はきわめて低く、UAEの極めてよい適応だと思います。

あ、肝心な回答を忘れていました。

入院期間:3泊4日 
費用:税込み45万円。 ただし1延泊すると1万円前後余計にかかります。それ以外は取らない。
手術後の痛み:軽い ネットで言われているほど痛くない。
病院の雰囲気:最高。特に血管造影室の雰囲気は至高。
予約の取りやすさ:きわめてスムース。

私は府中で治療を受けたのでははなく治療している立場ですが回答しました。
ちなみに府中UAEセンターではなく東京UAEセンターです。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1071301005

5本の指

6-7年前のことだったと思います。

私は神奈川県にある葉山ハートセンターでUAEセンターの名称をいただき診療をさせてもらっていました。

当時の病院長は高名な心臓外科医で、世界初の胃大網動脈を使用した心臓バイパス術、日本初のバチスタ手術を行い、しばしばマスコミにも取り上げられる先生でした。

ある日、病院長が医局に入ってこられ、

『瀧君。○○さんという患者さん覚えている? 君がUAEした、、。』

と話しかけてきました。 無駄なことはあまり話さない病院長でした。私は名前に記憶がなく(顔を見れば必ず覚えているのですが)、院長が医局にやってきてUAEの患者の話題をするなんてよほどまずいことが起きたのだろうかと心配になりました。

『覚えていません。何かまずいことでも起きたのでしょうか?』

『いや、そうじゃない。調子が良くてとても喜んでおられる。○○さんの親戚と会食をしてね、ここ(葉山ハートセンター)でのUAEが話題になった。なんでも徹底的に調べ上げてここがNo1だということでUAEをすると決めたんだそうだ。いや、僕もうれしかったよ。』

私は病院長にこう言いました。

『先生。褒めすぎです。せめて5本の指に入るくらいにしてください。』

というのは当時(今もですが)年間100例あまりのUAEを行っている術者は日本に5人ほどしかいなかったからです。

ところが病院長は

『指は5本いらない。1本でいい。残りの4本は切り落としなさい。』

と言って医局を出て行かれました。

この病院でUAEを行うのならNo1になるつもりでいてほしいという気持ちからの発言なのか院長の専門である心臓外科ならば5本の指に入ればいい程度の気持ちではおぼつかないぞという意味かどうかは今となっては判りかねますが、心臓外科がとても厳しい世界であることを彷彿させました。

今でもはっきりと覚えていますが、医局には黒板があって心臓外科手術の予定がびっしりと書かれていました。

名前、病名、予定手技、、最後に紹介病院名があったと思います。 心臓外科が専門ではない私にも予定手技を見ただけで、単純な手技が少なく、複雑なものがほとんどであることは理解できました。

紹介病院名には名だたる大学病院、基幹病院名が目白押しでした。

UAEが効く腺筋症と効きにくい腺筋症

子宮腺筋症に対するUAEはUAE前に治療効果が期待できるのかそうでないのかがはっきりとわからないことが問題点でした。私は治療効果があまり期待できない腺筋症はなんとなく認識していたのですが、この論文を読んでかなりはっきりとしてきました。


Journal of Vascular and Interventional Radiology

Volume 22, Issue 4 , Pages 497-502, April 2011

.Uterine Artery Embolization for Symptomatic Adenomyosis: A New Technical Development of the 1-2-3 Protocol and Predictive Factors of MR Imaging Affecting Outcomes
 
150μから500μまでの塞栓物質を細かいほうから注入する方法で40例の腺筋症にUAEを行ったところ33例(82.5%)に完全梗塞を得たということです。
 
腺筋症病変部のMRIパターンによって梗塞率に違いが出て
 
1:T2強調像でDark pattern(腹直筋と同じ信号強度)6例 すべて完全梗塞
 
2:T2強調像でLow pattern(腹直筋~正常筋層までの信号強度)28例 25例が完全梗塞(89.3%)、2例が部分梗塞(7.1%)、1例が梗塞なし(3.6%)
 
3:T2強調画像で不均一もしくは正常筋層と同じ信号強度6例 2例が完全梗塞(33.3%) 4例が梗塞なし(66.7%)
 
この報告によると、UAEをするにあたって、腺筋症がDark patternであれば完全梗塞が得られるのでUAEの非常によい適応ということになります。Low patternでも90%近くが完全梗塞ですからよい適応といえます。もし不均一もしくは正常筋層と同じ信号強度であったなら完全梗塞は30%ですからあまりよい適応ではないということになります。
 
術前に上記のことを患者さんに説明することによってより一歩進んだインフォームド・コンセントができるようになります。
 
ただこの論文にも問題点があります。腺筋症病変部を上記のようにクリアカットに3つのパターンに分類できない場合があることです。一部はDark patternを呈するも不均一な部分もあるといったケースです。いずれにせよDark pattern 、Low patternは塞栓されやすいということがはっきりしてきたことは今後の診療に役立ちます。
 
タイトルをクリックすると抄録が読めます。

子宮腺筋症に対するUAEの治療効果 -海外の状況-

Journal of Vascular and Interventional Radiology


Volume 22, Issue 7 , Pages 901-909, July 2011.
 
より。
 
欧米においてもUAEの子宮腺筋症に対する治療効果が出てきているようです。米国のIVR学会雑誌に2011年7月に発表された論文によると15の報告、計511名の腺筋症に対する治療効果は、平均2年3ヶ月の経過観察で75.7%で症状改善が認められ、感染等の合併症は認められなかったのことです。
 
子宮腺筋症を根治できるのは子宮全摘術だけですが(それ以外の方法は無効の場合や再発の可能性があります。)閉経になれば腺筋症による症状もなくなるということを考えれば、たとえ3年後、5年後に再発したとしてもそれだけ年月が経っているわけですし、再UAEの可能性やジェノゲストや低用量ピル、GnRHa等のホルモン療法を組み合わせることによって子宮全摘をせずにコントロールし、閉経まで逃げ込むことができうるわけです。
 
UAEは子宮腺筋症に対する有効な治療法になりえると確信しております。

まもなく2000症例

府中恵仁会病院に赴任させていただき1年が過ぎました。間もなくUAEは100症例、1998年から通算すると約2000症例になります。恵仁会病院でのUAEは技術的成功率:両側の子宮動脈にカテーテルが挿入でき塞栓する:は片側の子宮動脈が欠損していた1例を除き全例に成功しました。片側
の子宮動脈が欠損する例は100~200例に1例ほどあります。この症例のみ片側塞栓でした。

脳血管や心臓血管のIVRはそれぞれ脳外科、循環器科によって行われています。脳動脈瘤のコイル塞栓術、脳動静脈奇形の塞栓術、頚動脈狭窄症に対するステント治療は脳外科、冠状動脈ステント治療、下肢ASO、腎動脈狭窄、透析シャントPTAなどは循環器科が行っています。

私は脳血管、心臓血管以外のIVRは大抵こなしますので、府中恵仁会病院にはIVRセンターがあるといってもいいほどです。

脳血管や心臓血管のIVRでのディバイスの発達には目覚しいものがあり時折見学させていただき
自分の技術向上に役立たせてもらっています。


UAE後の妊娠の可能性

SIR: Pregnancy Possible After Fibroid Embolization By Kristina Fiore, Staff Writer, MedPage Today

Published: March 15, 2011

 Reviewed by Zalman S. Agus, MD; Emeritus Professor

University of Pennsylvania School of Medicine and Dorothy Caputo, MA, RN, BC-ADM, CDE, Nurse Planner
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Explain that a small, single-center study found women who underwent uterine fibroid embolization (UFE) had a subsequent fertility rate comparable to that of surgical removal of fibroids.


Note that this study was published as an abstract and presented at a conference. These data and conclusions should be considered preliminary until published in a peer-reviewed journal.

TAMPA -- Fertility rates after uterine fibroid embolization (UFE) are comparable to those following myomectomy, researchers said here.

In a small, single-center study, women who had the procedure had a subsequent fertility rate of 58.1%, Joao Martins Pisco, MD, of St. Louis Hospital in Lisbon, Portugal, and colleagues reported at the Society of Interventional Radiology (SIR) meeting here.

That compares with a rate of about 57% for surgical removal of fibroids, Pisco said.

"UFE should not be contraindicated in patients who want to conceive," he said. "They should be able to choose between surgical options and UFE."

Pisco referred to 2004 guidelines from the American College of Obstetricians and Gynecologists, which advise that UFE should not be used if the patient wants to get pregnant. Instead, myomectomy, or full surgical removal of fibroids, is considered the gold standard in women who wish to conceive.

But John Lipman, MD, of Emory University in Atlanta and a spokesperson for SIR who was not involved in the study, noted that patients have about a 50% reduced fertility after their first myomectomy, which declines even more after subsequent procedures.

So, to evaluate fertility rates after UFE, the researchers performed the procedure on 743 patients, 74 of whom wanted to preserve their ability to become pregnant.

None of those women could successfully conceive at the time of UFE, and their mean age was 36.2 years.

Uterine arteries were embolized with either polyvinyl alcohol particles (26 patients) or embozene microspheres (three patients).

The procedure was x-ray-guided and done under local anesthesia, but Pisco noted that "if [the] patient wants to get pregnant, we do the embolization in a different way, . . . using a lower x-ray time, and we embolize only vessels giving blood to fibroids."

Among those 74 patients, 43 became pregnant after the procedure, for a total fertility rate of 58.1%, compared with a rate of 57% for patients with myomectomy.

Their mean time to conception was 10.8 months.

Pisco reported a total of 36 finished pregnancies, with 30 successful live births.

The remaining pregnancies had the following results:

13.8% had spontaneous miscarriage

10% had preterm delivery

13.3% had low birth weight



There were no significant neonatal problems, Pisco said.

Seven other women have ongoing pregnancies with normal evolution and are waiting for term.

Lipman, who wasn't involved in the study, called the pregnancies "remarkable."

"We've been told that you can't do UFE on patients who want to get pregnant," he said.

He cautioned, however, that patient selection is important, especially the woman's age.

"You have to look at each patient. You have to assess if she's symptomatic, and second, you have to ask, what is her chance of truly getting pregnant?" he said.

Pisco said larger randomized, controlled trials should be done comparing UFE and myomectomy.

The researchers reported no conflicts of interest.

妊娠・出産希望者に対するUAEは 

 1)低線量で行う。
 2)マイルドな塞栓にとどめる。

ということです。


UAEは塞栓物質で行うものではなく、“腕”と“心”で行うものなのです。

子宮腺筋症に対するUAEの治療効果

昨年の日本IVR学会総会で発表した内容をもう一度見直してみました。最近は子宮腺筋症の患者さんが増えています。子宮腺筋症のUAEでは病巣が完全に梗塞になった場合はきわめて良好な治療効果が得られます。手技そのものは30分程度で終了し、24-48時間後には退院可能なまで回復が早いというのはUAEの大きな利点です。
腺筋症に対するUAEの問題点は完全に梗塞になる場合とそうでない場合がほぼはっきりと分かれてしまうことです。どちらになるかは術前に判断できません。もし術前に判断ができれば患者さんに『あなたの場合はいい適応です。』と自信を持って説明ができますし、適応となる患者さんを選択することができます。どういった腺筋症は完全梗塞になりにくいかが判るにはどうしても症例の蓄積が必要で検討が必要なのです。



     【子宮腺筋症に対するポンピング法ゼラチンスポンジ使用によるUAE】
               (第39回日本IVR学会総会にて口演)

【目的】ポンピング法にて作成したゼラチンスポンジを塞栓物質とした子宮腺筋症に対するUAEの治療効果を検討。


【方法】2003年から2009年まで当院にてUAEが施行された子宮腺筋症82例のうち筋腫合併を除く37症例を対象。塞栓物質は充分にポンピングしたgelformのみ。塞栓の程度はDSA上子宮動脈水平枝が描出されなくなるまでとした。UAE施行時の年齢は29-52歳(平均42.9歳)、経過観察期間1-71ヶ月(平均20.8ヶ月)。UAE前後のMRI画像、臨床症状、FSH、CA125を検討。

【成績】両側子宮動脈塞栓36例、両側および右卵巣動脈付加塞栓1例であった。全例でUAE後48時間以内の退院が可能であった。UAE後1ヶ月の造影MRIにて腺筋症病変の梗塞領域を検討したところ、完全梗塞23例(62.2%)、50-99%梗塞9例(24.3%)、50%未満梗塞5例(13.5%)であった。全例でUAE後から月経痛、過多月経等の臨床症状は改善されたが経過観察中5例で症状再燃が認められ、症状再燃までの期間は3-36ヶ月(平均15.6ヶ月)であった。再治療が4例(ATH:1例、GnRHa:3例)に施行された。UAE後の無月経は6例(一過性:2例、閉経:3例、子宮性:1例)でUAE施行時年齢はいずれも45歳以上であった。CA125の低下は梗塞領域とよく相関した。


【結論】ポンピング法ゼラチンスポンジによるUAEは子宮腺筋症に対して有用で安全な方法と思われた。





グラフから子宮腺筋症単独の場合でも3年で70-80%、5年で70%弱の患者さんが症状コントロールされていると言うことになります。逆に言えば3年以内に20-30%の患者さんはコントロール不良になるということです。尚、筋腫を合併した腺筋症でも充分治療効果があることは先の日本医学放射線学会総会で口演しました。


名手に学ぶ

UAEは技術的には---カテーテルを左右の子宮動脈に挿入し、そこから塞栓物質を注入する---と至極シンプルな手技です。

違った道の名手の言葉です。


------若いヴィルトゥオーソは、練習している曲にあまりにも早く飽きてしまいがちである。彼らは薄れ行く興味を育て直すことはせず、その曲を弾くたびに、なにかを付け加えたり、楽譜になにか特別の意味を付与しようとすることには関心を示さない、、、常に完璧性を求め、音楽的にも、テクニックの点からもその曲の表現に工夫を加えていくべきである。またたえずフィンガリングの改善を試みていくべきである。大演奏家の多くが、たくさんのレパートリーをもっているわけではないが、彼らは何年にもわたってそのレパートリーについて考え、練習を続けているのである。メンデルスゾーンの協奏曲のように何度も演奏しているものでさえ、演奏するたびに、よりよい演奏をし、さらに優れた仕上げを試み、細部を磨き上げなければならない。----ジノ・フランチェスカッティ------

これはUAEに限らず、あらゆる手技、手術に通じるところがあります。メンデルスゾーンの協奏曲をUAEに例えれば手技自体もそうですが、術前の適応から術中術後の管理等すべてを含めて細部まで磨き上げねばなりません。

UAE後の妊娠

今年になってから2名のUAE後の出産の報告を受けました。今回新たにUAE後の妊娠を確認しました。1年半ほど前にUAEを行った腺筋症患者さんでした。1年半前なので私が葉山ハートセンターに在職していた時にUAEを行ったのです。患者さんを紹介してくれたのは葉山ハートセンターの院長をしておられた心臓外科医の須磨先生でした。
自然妊娠でした。腺筋症に対するUAE後の妊娠は体外受精で妊娠した1症例のみ経験していたので今回の自然妊娠はうれしさひとしおです。妊娠した場合は報告するようにと言っていましたので外来受診していただき超音波で胎児を確認、心拍も確認しました。
私はうれしさのあまり胎児ばっかりチェックしておりうっかり腺筋症を確認していませんでした。
検査後胎児は問題なく発育していることをお話したあともう一度横になっていただき超音波で腺筋症をチェックしました。腺筋症病変部は残存しているものの以前と比べて縮小していました。さらにカラードップラーで子宮動脈の血流も確認しました。塞栓物質であるゼラチンスポンジは吸収性であるため子宮動脈本幹は再開通する傾向が高いのです。ただし筋腫を養っている腫瘍動脈は再開通しにくい、おそらく腺筋症の場合も同じでしょう。
UAE後の出産を受け入れてくれる施設に紹介状を書きました。
朗報を期待しています。


追記:この患者様はこの後無事に出産されました。帝王切開でしたが癒着胎盤も無く2552gの元気な男の子でした。


子宮腺筋症の核出術

腺筋症に対する核出術を検索すると、2度の核出術後に体外受精で妊娠するも、流産、癒着胎盤と多量出血のためUAE(これは止血目的のUAEです。)を行うも出血と感染兆候の増悪、出血コントロール不良のために開腹子宮全摘となった症例が報告されています。

子宮腺筋症核出術2回施行後の妊娠で中期流産となり,癒着胎盤のため子宮摘出に至った一例
http://kanto-sanfujinka.ehost.jp/journal/lfx-journal_detail-id-19198.htm
【背景・目的】子宮腺筋症は35歳以上の女性に多く認められ,結婚年齢の上昇により妊娠に合併する例が増加している.近年,子宮腺筋症に対する保存的治療として手術的に腺筋症病変を切除する方法が報告されているが,手術後の妊娠予後については未だ不明の部分が多い.今回我々は,子宮腺筋症核出術を2回施行後,体外授精で妊娠成立したが,妊娠中期に流産となり,さらに癒着胎盤のため子宮摘出に至った症例を経験したため報告する.

【症例】症例は39歳,2経妊0経産.子宮腺筋症による月経痛,過多月経ひどく33歳時に子宮腺筋症核出術を施行した.その後2回初期流産.35歳時に再発し再度核出術を施行した.その後,両側卵管閉塞のため体外授精を行い妊娠成立し当院初診となった.妊娠16週,腹緊の自覚とともに頸管長の短縮を認めたため,入院とし塩酸リトドリン持続点滴を開始した.18週5日,腹部症状の増悪とともに胎胞脱出を認め,19週1日に死産となった.死産後胎盤が娩出せず,出血量が1500 mLを越えたため輸血開始し,止血目的に子宮動脈塞栓術(UAE)を施行した.UAE施行後,胎盤の自然排出を期待し待機したが,UAE後10日目,出血と感染兆候の増悪を認めたため子宮内容除去術を施行した.しかし胎盤摘出後も出血のコントロールつかなかったため,開腹し子宮全摘出術施行した.子宮・胎盤の病理学的検査にて,癒着胎盤の診断であり,子宮筋層には高度な子宮腺筋症の残存を認めた.

【考察】子宮腺筋症核出術は子宮温存目的に近年施行されるようになってきたが,妊娠予後については不明な部分も多く,今回の症例のように重篤な妊娠合併症を来す可能性があることを念頭に置く必要があると考えられた.



もちろん腺筋症核出術後に無事に出産している例もあると思いますが、こういったこともあるのだと勉強になります。

つまり、外来で腺筋症で挙児希望の場合は、

『妊娠・出産を望んでいるのなら第一選択はUAEよりも核出術だと思うが、その核出術にもリスクがある。実際に核出術を手がけている先生によく話を聞いてください。』

という必要があるということです。

私自身は血管カテーテルによる診断と治療を専門としているので子宮筋腫や腺筋症を手術することはありません。(大昔に手術の助手をした事はありますが、、、。)
ですから自分自身で手術とUAEとの比較を体感できないのです。手術がどのくらい大変なものかということを術者として体感できない。手術した患者さんを自分で責任を持って管理し、その患者さんがたどる経過を身をもって体感できないのです。
(UAEに関してはそれができるのですが、、。)

ですから手術もする、UAEも行うという医師がいれば、それを体感できて、UAEと手術のどちらがいいとか、こういった場合は手術、こういった場合はUAEのほうがいいとより判断できると思います。

手術もするUAEもするという医師はおそらくほとんどいないと思います。

私が知っている限りでは手術を行う産婦人科医でありながら200症例以上のUAEを手がけた医師が一人いるだけです。




子宮腺筋症に対する核出術

子宮腺筋症に対するUAEの治療効果については私のHPで述べています。

子宮腺筋症患者さんで挙児希望の場合は核出術を第一選択とするように外来ではお話しています。

それではその核出術に関してはどうなのかを検索してみました。

2010年の日本エンドメトリオーシス会誌がヒットしましたので簡単に解説します。

http://www.endometriosis.gr.jp/non-member/kaishi/kaishi31pdf/endai42.pdf#search='筋腫核出術後%20妊娠'


1例目は41歳 高周波切除器を用いた核出術後4ヶ月ICSI(顕微授精)で妊娠 切迫子宮破裂、胎児位置異常のため帝王切開 1290gの生児を得る 癒着胎盤 出血量2900ml 子宮筋層はきわめて薄くなっていた(0.5mmの部分もあった。)

2例目は42歳 3重フラップ法による核出術後7ヶ月でICSIで妊娠 子宮筋層は5mm程度に菲薄化
帝王切開 2645gの生児を得る 出血量1250ml 癒着胎盤


症例は2例と少ないですが、いずれもハイリスク妊娠・出産で

1. 子宮筋層が薄くなり子宮破裂のリスク
2. 癒着胎盤のリスク
3. 出産は帝王切開
4. 多量の出血

が挙げられます。

さらに人工授精(顕微授精)、高齢出産であったということも関係すると思います。

この論文によると子宮腺筋症核出術後妊娠の子宮破裂率は6%で比較的高いと述べています。
(筋腫核出術の場合は0.24-5.3%)

こういう数字をみると子宮腺筋症のUAE後の妊娠・出産はどうなのかと考えます。
筋腫に対するUAE後の妊娠・出産例は数多くあり、もちろん癒着胎盤、胎児位置異常のリスクはあります。

何よりも腺筋症に関しては核出術とUAEとを比較検討した研究がないのです。

最近筋腫に対するUAE後の妊娠・出産に関する安全性の報告が増えてきました。将来は子宮腺筋症に対するUAE後と核出術後の比較検討に関する論文が出てくると思います。


21年以上の長きに行われている子宮動脈塞栓術

Ravina医師、Merland医師も最初にUAEを行ったパリ大学のLariboisiere(ラリボアジエ)病院にはおらず、Bizet clinicに移籍したようです。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/uog.5676/pdf

2008年8月に米国シカゴにおいてUAEの発表を行っていました。 Bizet(ビゼー)clinicのBizetはカルメンの作曲者でもあるビゼーとおなじ綴りです。

ここではRavina医師らは” UAE後も妊娠可能である。 若干の胎盤異常のリスクがあり、帝王切開が多いのはそのためだろう。今日、UAEは女性の妊よう能には影響しない。”
と言ってます。

子宮筋腫のUAEは1989年にパリ大学のLariboisiere(ラリボアジエ)病院で行われ、1995年にLancetに発表され、現在ではPelage医師らが引継ぎ、21年以上の歴史とともに世界をリードしています。

タイトルをクリックするとBizet(ビゼー)クリニックのサイトに行きます。

現在もRavina医師らがそこで働いているかどうかはわかりません。

でもおしゃれなクリニックですね。

子宮動脈塞栓術:パリの学会

GEST

Global Embolization Symposium and Technology


来る4月27日から30日までフランスのパリにて開催される学会で、特にカテーテル等を用いた塞栓療法に焦点を当てています。

子宮動脈塞栓術はこの学会の中で一大トピックでヨーロッパの状況を把握することができます。

今回のUAEセッションを見ると

UFE practice development

Which fibroid patient are not suitable?

Alternative treatment for UFE

Long-term outcome of UFE: state of evidence

Invisible anastomosis

Treatment of adenomyosis

Management the post-UFE patient

Fertility and UFE



と盛りだくさんで、UAEの適応、長期成績、腺筋症への適応、そして妊よう性が議論されるようです。



子宮筋腫のUAEは1995年にLancetという医学雑誌にパリの婦人科医であるRavina医師がMerland医師らと発表したのが最初です。Ravina医師は婦人科医なのでカテーテル治療はしません。実際にカテーテル治療をしたのは放射線科医のMerland医師でした。

最初の報告からすでに15年以上を経過しており、Ravina医師、Merland医師らの動向が気になって調べてみました。

タイトルをクリックすると学会のプログラムが読めます。

UAE後の妊娠

今年になって以前に私がUAEを行った患者さんが妊娠し出産したとの報告が立て続けに2例ありました。 いずれも自然妊娠でした。

私自身はUAE後も普通に妊娠するのではないかと肌で感じていましたが、確信にはいたっていません。実は最初の10例のUAEのうち2例、3回の妊娠を経験しており(1999年のことです)、以前の病院では39歳、40歳、43歳の出産を経験しているからです。しかも以前の病院の妊娠例はいずれも高齢出産にもかかわらず帝王切開ではなく経膣分娩でした。

妊娠希望者にとってUAEは第一選択にはならないというのは米国の産婦人科がそのような声明を出したからで、理由は出産時に胎盤からの出血や、癒着胎盤のリスクが若干高まるというデータ、および卵巣機能低下の可能性があるという理由からでした。この声明以来、私自身は妊娠希望者に対しては積極的にはUAEを勧めていませんでした。

ところが2010年の9月にこれを覆すような報告がありました。 ポルトガルからの報告でFertility and Sterilityという権威ある婦人科学の医学雑誌に発表されました。

74人の挙児希望者にUAEを行い、44人(59.5%)が妊娠したというのです。(驚き!) 33人が出産し、流産4、人工流産1、死産1とのこと。また、36週での早産2、低体重児5とのことです。出産にいたっていない5人も妊娠継続中。

この報告に関する限り出産時の胎盤からの出血や癒着胎盤は認められないということで、UAEは妊娠希望者には原則行わないという見解が変わる可能があるとUCLAのParker教授はコメントしています。さらにParker教授はUAE後の妊娠にそれほど神経質になることもないともコメントしています。

http://www.fibroidsecondopinion.com/2010/11/pregnancy-after-uterine-fibroid-embolization/

2月5日にUAE市民公開講座を行います。

今週は5症例のIVRでした。UAEが3例、腫瘍に対するTACE1例、骨盤の動脈からの出血に対する緊急TAE1例でした。
2月5日(土曜)は恵仁会病院の第二回目のUAE公開講座です。
今回は子宮腺筋症の治療成績にすこし重点をおいて解説したいと思っています。

2011年最初の1週間

2011年は最初の1週間で3症例のIVR(血管内治療)を行いました。

消化管出血に対する血管塞栓術、喀血に対する気管支動脈塞栓術、閉塞性動脈硬化症に対する総腸骨動脈バルーン形成術およびステント留置術です。

いずれも1時間程度の手技時間で終了し、2011年は幸先のよいスタートです。

1月11日よりUAE症例も始まります。今月は内外の施設で14~15症例のUAEが見込まれています。

あけましておめでとうございます。

あけましておめでとうございます。

2010年は5月中旬より府中恵仁会病院にて東京UAEセンターの名称をいただき診療に励んでまいりました。おかげさまで約半年間で府中恵仁会病院のみで61症例のUAEを施行することができました。

2011年は1月4日より通常どおり診療を行って参ります。