UAEが効く腺筋症と効きにくい腺筋症

子宮腺筋症に対するUAEはUAE前に治療効果が期待できるのかそうでないのかがはっきりとわからないことが問題点でした。私は治療効果があまり期待できない腺筋症はなんとなく認識していたのですが、この論文を読んでかなりはっきりとしてきました。


Journal of Vascular and Interventional Radiology

Volume 22, Issue 4 , Pages 497-502, April 2011

.Uterine Artery Embolization for Symptomatic Adenomyosis: A New Technical Development of the 1-2-3 Protocol and Predictive Factors of MR Imaging Affecting Outcomes
 
150μから500μまでの塞栓物質を細かいほうから注入する方法で40例の腺筋症にUAEを行ったところ33例(82.5%)に完全梗塞を得たということです。
 
腺筋症病変部のMRIパターンによって梗塞率に違いが出て
 
1:T2強調像でDark pattern(腹直筋と同じ信号強度)6例 すべて完全梗塞
 
2:T2強調像でLow pattern(腹直筋~正常筋層までの信号強度)28例 25例が完全梗塞(89.3%)、2例が部分梗塞(7.1%)、1例が梗塞なし(3.6%)
 
3:T2強調画像で不均一もしくは正常筋層と同じ信号強度6例 2例が完全梗塞(33.3%) 4例が梗塞なし(66.7%)
 
この報告によると、UAEをするにあたって、腺筋症がDark patternであれば完全梗塞が得られるのでUAEの非常によい適応ということになります。Low patternでも90%近くが完全梗塞ですからよい適応といえます。もし不均一もしくは正常筋層と同じ信号強度であったなら完全梗塞は30%ですからあまりよい適応ではないということになります。
 
術前に上記のことを患者さんに説明することによってより一歩進んだインフォームド・コンセントができるようになります。
 
ただこの論文にも問題点があります。腺筋症病変部を上記のようにクリアカットに3つのパターンに分類できない場合があることです。一部はDark patternを呈するも不均一な部分もあるといったケースです。いずれにせよDark pattern 、Low patternは塞栓されやすいということがはっきりしてきたことは今後の診療に役立ちます。
 
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子宮腺筋症に対するUAEの治療効果 -海外の状況-

Journal of Vascular and Interventional Radiology


Volume 22, Issue 7 , Pages 901-909, July 2011.
 
より。
 
欧米においてもUAEの子宮腺筋症に対する治療効果が出てきているようです。米国のIVR学会雑誌に2011年7月に発表された論文によると15の報告、計511名の腺筋症に対する治療効果は、平均2年3ヶ月の経過観察で75.7%で症状改善が認められ、感染等の合併症は認められなかったのことです。
 
子宮腺筋症を根治できるのは子宮全摘術だけですが(それ以外の方法は無効の場合や再発の可能性があります。)閉経になれば腺筋症による症状もなくなるということを考えれば、たとえ3年後、5年後に再発したとしてもそれだけ年月が経っているわけですし、再UAEの可能性やジェノゲストや低用量ピル、GnRHa等のホルモン療法を組み合わせることによって子宮全摘をせずにコントロールし、閉経まで逃げ込むことができうるわけです。
 
UAEは子宮腺筋症に対する有効な治療法になりえると確信しております。

まもなく2000症例

府中恵仁会病院に赴任させていただき1年が過ぎました。間もなくUAEは100症例、1998年から通算すると約2000症例になります。恵仁会病院でのUAEは技術的成功率:両側の子宮動脈にカテーテルが挿入でき塞栓する:は片側の子宮動脈が欠損していた1例を除き全例に成功しました。片側
の子宮動脈が欠損する例は100~200例に1例ほどあります。この症例のみ片側塞栓でした。

脳血管や心臓血管のIVRはそれぞれ脳外科、循環器科によって行われています。脳動脈瘤のコイル塞栓術、脳動静脈奇形の塞栓術、頚動脈狭窄症に対するステント治療は脳外科、冠状動脈ステント治療、下肢ASO、腎動脈狭窄、透析シャントPTAなどは循環器科が行っています。

私は脳血管、心臓血管以外のIVRは大抵こなしますので、府中恵仁会病院にはIVRセンターがあるといってもいいほどです。

脳血管や心臓血管のIVRでのディバイスの発達には目覚しいものがあり時折見学させていただき
自分の技術向上に役立たせてもらっています。