UAE近況

平成25年の当院におけるUAE症例は98例でした。昨年は100例でしたのでほぼ同じということです。手技的成功率99%(1例のみ片側子宮動脈塞栓)、合併症はありませんでした。また個人としてはのべ2200症例を超えました。UAEはエックス線透視をしながら手技が行われるという性格上、手技時間の延長が被曝の増大に直結しますのでカテーテル挿入困難例に当たった場合、挿入に時間がかかると被曝が増大します。UAEを施行するためのエックス線装置はリアルタイムに放射線量が表示されますが、表示された放射線量すべてが患者さんに当たっているわけではありません。
しかし放射線量は過小評価してはならないという原則にのっとり表示された放射線量が患者さんに当たっているとの前提で、そのおおよそ10-30%が卵巣に当たると考え、卵巣被曝が650mGを超えないようにしています。この650mGという数値は一過性卵巣機能低下を起こしえる数値です。したがって表示された線量は2Gを超えないようにしています。2Gを超えそうな場合は手技を中止します。片側塞栓で終了した場合も十分に臨床効果を期待できる場合もありますし、そうでなかった場合でも将来的にもう片側が発達して挿入しやすくと考えられているので再度UAEを行えばよいということになります。現状ではUAEは保険収載されていないため再UAEの費用を考えると患者さんは躊躇しますが、当院では再UAEの場合(1年以内の再発など)は費用を安く設定しています。
将来的にUAEが保険収載されれば自己負担はかなり安くなると想定されます。おそらく子宮全摘術や筋腫核出術より安くなるでしょう。

お詫び

本日午後外来診察中に気分不良となり当院循環器科医師からドクターストップ、安静の指示がかかり外来診療が中止となってしまったことをお詫びします。遠方からの患者様もおり、心苦しく思っております。前日は2症例、前々日は5症例のUAEを施行し病院に泊まり込んでおり無理がたたったようです。安静と簡単な処方で直ぐに回復しました。

今後も懇切丁寧な説明、誠実な対応をモットーに診療を継続させていただく次第です。
尚、当院でのUAE症例が300例に達し、経験症例は2200例を超えたことを報告いたします。
平成25年9月26日

第42回日本IVR学会総会


2013年5月16日-18日に開かれた日本IVR学会総会に出席してきました。
ここ数年IVR関係で新しい話題というのは特にありません。今回の発表内容も過去においてすでに確立された手技のまとめというか、現在どういった位置づけをしているかというものがほとんどでした。
UAEに関しては子宮筋腫、子宮腺筋症を対象とした発表は韓国からのポスター発表1題のみで、産科出血に対するUAEがほとんどでした。歴史的には産科出血のUAEのほうが古くからあり、子宮筋腫・腺筋症のUAEが新しいのです。
IVR学会では手技の全国規模での登録制度があり、専門医修練施設は手技を登録することができます。もちろん必須ではないし、IVRは専門医修練施設のみで行われているわけでもなく、循環器科や血管外科、脳外科で行った場合は登録されてないと思われるのですべてではありません。

学会会場では昨年のIVR件数が手技ごとに上位施設がスクリーンに公表されます。

ところで欧米で塞栓術に使用されているビーズ(Embosphere)が日本でも承認が取れ、まもなく使用可能になるようです。

販売元の日本化薬によると「Embosphere® Microspheres」は、豚ゼラチンを含浸およびコーティングしたアクリル系共重合体からなる非吸水性のビーズで、子宮筋腫、血管過多腫瘍や動静脈奇形を対象に50ヶ国以上で販売され、特に米国では子宮筋腫のUAE治療(子宮動脈塞栓術)に広く用いられているということです。

私はUAEに使用する塞栓物質はPVA、ゼルフォーム、スポンゼル、ジェルパートと使用してきましたが、ビーズを使用した経験はありません。

私はどの塞栓物質が一番いいのかは知りませんがそれぞれの塞栓物質の性質、性能を理解してそれを肌で感じ取って自分なりの最高のUAEができればいいわけです。




UAE後の妊娠・出産


下の数値は2012年に報告されたUAE後の妊娠・出産に関するデータです。一つはヨーロッパからの報告、一つは日本からです。Piscoらの報告をみると妊娠率が高いことがわかります。一方Kojimaらの報告7.5%ですから高くはありません。論文を読むと判りますが、挙児希望者の中には未婚者や挙児希望といってもできればよくてどちらでもかまわないというケースも含まれており、実際に手技を担当した私も挙児希望とはいえ40歳以上が少なくないといった印象でした。Piscoらの報告には癒着胎盤や低出生体重児ありますが、Kojimaらの報告にはありません。もちろん将来において出現する可能性はありますが、現時点でUAE後の妊娠・出産は安全といっても良いと思われます。塞栓物質ではそれぞれPVA、ポンピング法によるゼラチンスポンジと違いがありますが、共通していることはやや控えめの塞栓をしているという点です。ところでPiscoらは2010年にも同様の報告をしており、当時は挙児希望者74人中44人の妊娠と発表していましたのでこの2年に50人以上の挙児希望者に対してUAEを行っている事になります。彼らは2010年の報告の際に『Pregnancy after UAE appears to be safe : UAE後の妊娠は安全のようである。』と結論していますが、2012年の報告時には『Partial uterine fibroid embolization is safe and efficient with high rate of spontaneous pregnancies (58.7%) and live birth (85.9%).:部分的なUAEは高率な自然妊娠、出産に対して安全で有効である。』と結論しており、妊娠率にも言及しているので、どういった筋腫の症例がUAE後に妊娠しやすいかを体得しているものと思われます。

 


Pisco et al 2012

Kojima et al 2012

挙児希望者

126

295

妊娠

7458.7%):22-43歳 平均36.8

22(7.5%) 30-38歳 平均33.4

出産

5585.9

15(68.2%)

  帝王切開

  3767.3%

  7(47%)

  経膣分娩

  18

  8

自然流産

710.9%

3(13.6%)

人工流産

 1

 0

死産

 1

 0

癒着胎盤

2(3.6%)

 0

低出生体重児

5(6.8%)

 0

妊娠中

10
  4