ジノ・フランチェスカッテイ

------若いヴィルトゥオーソは、練習している曲にあまりにも早く飽きてしまいがちである。彼らは薄れ行く興味を育て直すことはせず、その曲を弾くたびに、なにかを付け加えたり、楽譜になにか特別の意味を付与しようとすることには関心を示さない、、、常に完璧性を求め、音楽的にも、テクニックの点からもその曲の表現に工夫を加えていくべきである。またたえずフィンガリングの改善を試みていくべきである。大演奏家の多くが、たくさんのレパートリーをもっているわけではないが、彼らは何年にもわたってそのレパートリーについて考え、練習を続けているのである。メンデルスゾーンの協奏曲のように何度も演奏しているものでさえ、演奏するたびに、よりよい演奏をし、さらに優れた仕上げを試み、細部を磨き上げなければならない。----ジノ・フランチェスカッティ------

私はこの言葉が気に入っています。フランチェスカッティは1902年マルセイユ生まれのヴァイオリニストでミルスタイン同様に来日したことのない演奏家の一人ですが、その輝かしい音色、卓越した技巧で20世紀を代表する巨匠です。曲をUAEに当てはめてみましょう。UAEはカテーテルを左右の子宮動脈に選択的に挿入し塞栓物質を流し込むというきわめて単純な手技です。ある程度トレーニングを積めばそれほど困難なくできるようになります。手技のみを考えて見ます。極力フリーフローの状態で塞栓物質を流し込むことが必要とされていますが理論的にはカテーテルを十分に挿入すればするほどフリーフローから遠ざかることになります。事実どんなに愛護的なカテーテル操作を行っても塞栓終了時に子宮動脈本幹にスパスムが起きていることはしばしば経験します。細くしなやかなカテーテルを使用すれば奥まで挿入できて血管への刺激も少ないと考えますが、細くなると塞栓物質が通過しませんし十分な量の造影剤も流し込めませんので良好な造影所見を得にくくなります。またエンボスフィアは500μ以上のサイズを使用しますので少なくともカテーテル内腔は500μ以上なくてはいけません。実際には良好な子宮動脈造影が欠かせません。少なくとも良好な造影所見なしに塞栓物質を注入すべきではないのです。理由は子宮動静脈瘻、子宮動静脈奇形などA-Vシャントがあった場合、塞栓物質がすり抜けて静脈系に入り込み肺塞栓症を起こしえるからです。(A-Vシャントがなくても起こしえる。つまり骨盤内に静脈を圧迫しえる腫瘤を持った人が対象になること、またUAE後は一過性に凝固能が亢進します。子宮動静脈瘻、子宮動静脈奇形は極めてまれな疾患ですが、私は年間100症例はUAEを行っているのです。数をこなせばそういった疾患に遭遇する可能性は高くなります。)。そうすると選択的子宮動脈造影は少なくとも4F程度のカテーテルで良好な造影所見を得たのち、4Fカテーテルはなるべく深く挿入せずすぐにマイクロカテーテルを使用して十分に挿入する。ということになります。しかし、自動注入器を使用し、ハイフロー型マイクロカテーテルを使用すれば造影剤も十分量注入可能ですからこの限りではないことにもなります。一般に塞栓療法の対象は大部分が肝臓癌をはじめとする悪性腫瘍で、2度3度と治療を反復することを前提に行われます。一方UAEは良性腫瘍であり、患者さんも治療する方も極力1回の治療で済ませたいと考えます。長期的にみれば再発、再UAEもありえますが、原則1回で決めたい。1回の手技で筋腫核のすべてを完全に梗塞にする必要かつ十分な塞栓を求めて常に工夫し改善し細部にわたって磨き上げねばならないのです。フランチェスカッティの言葉にまさに共通しています。

エンボスフィアでの子宮動脈塞栓術(3)

エンボスフィアを塞栓物質としたUAEものべ30症例になりました。今週は5症例を行いました。透視時間は10分台から17分台で平均13,5分でした。エンボスフィアはゆっくりと末梢に流れていくためどうしてもエンドポイントが決めにくい。このため撮影回数が増えて透視時間も長引く傾向にあります。ゼラチンスポンジン場合はすぐに詰まりエンドポイントも決めやすい。ひいては透視時間は短縮され使用する造影剤も少量で済みます。
エンボスフィアでのUAEはいかに透視時間を短く、かつ造影剤の量を少なくするかが課題でした。当初は透視に20分程度かかっていたのが13-4分になってきました。造影剤も
以前より少量となってきました。ここまでくるのに30症例の経験が必要でした。
また塞栓前の造影所見を見ただけでおおよそどの程度の量のエンボスフィアが必要となるのかもわかってきました。そうなるとエンボスフィアを注入している間、ずっと透視を出している必要はなくなってきます。ひいては透視時間も短くなり、手技にかかる時間も短くなります。

エンボスフィアでの子宮動脈塞栓術(2)

本年2月以降にエンボスフィアを塞栓物質としたUAEを25症例行いました。UAEを行った後はその血管造影像を見直し、施術後の造影MRIを見、フィードバックすることにより塞栓のさじ加減を習得します。
短期間にある一定の症例をこなさないとどうしても習得は難しく、逆に短期間で集中的に症例数をこなすことにより、より効果的に習得できます。
25症例の内訳は透視時間は6分55秒から33分に分布、平均20分42秒。使用したエンボスフィアは1バイアルから11バイアルに分布、平均4.6バイアルでした。塞栓効果はpumping法によるゼラチンスポンジの場合と比較して差はないようです。
ただUAE後の疼痛に関してはエンボスフィアの方が少ないようです。
子宮筋腫はいわゆるcommon diseaseです。ですからその治療は「確立」されており「安定供給」されていなければいけません。