UAEの将来展望

今年のIVR学会総会でフランスから医師がやってきてフランスにおけるUAEの現状を話しました。年間およそ2400件のUAEが行われているそうです。日本の人口はフランスの2倍、フランスより数年遅れてUAEが始まりましたので日本は数年後にはフランスの倍の4800件が行われる計算になります。なぜフランスをモデルとするかというと日本と医療制度が似ているからです。アメリカはかなり違っているので参考になりません。関東の人口は4260万人で日本の30%以上が集中しています。つまりUAEも関東に集中することになります。単純計算で4800件の30%は1440件。年間関東地方では1440件となります。私は年間250件を行っていますので1440を250で割ると5.76つまり私が6人いれば関東のUAEはすべてこなせます。何のことはありませんね。手技だけなら250件はなんのことはありません。10年ほど前には手技だけならUAEのみで年間300件以上していました。それ以外の血管内治療も含めると360件余りを行っていました。術前の説明、手技の日取りの決定、カテ室の予約、術後日取りの決定、MRI枠の確保、患者さんの保険書類の記載、電子カルテの記載などほとんど全てを私が行っておりこちらの方が大変なのです。近い将来医療コーデイネーターが2,3人いて年間250例のUAEを行う術者が6人いるUAEセンターができればいいです。関東のUAEはすべてそこで行われればいいと思います。

保険適応後のUAE

エンボスフィアが子宮筋腫に対して保険適応となったためUAE症例が増加し、現在初診待ち、施術待ちとも40名前後を推移しています。2015年のUAEは250症例が見込まれ、すでに今年は施術枠が一杯となり今後受診される患者さんの施術は1月下旬から2月になると思われます。現在週に6-7例のペースでUAEの施術を行っています。2016年はUAEセンターをもう少し拡大したいと思っています。
題名をクリックすると2013年度の集計が出ます。UAEも子宮筋腫の手術とすれば2015年度は東京都内best10入りをしたと思われます。

UAEの安全性

表を見てわかるようにUAEは極めて安全性の高い治療法です。pumping法によるゼルフォームを塞栓物質とした成績です。合併症は表では7例になっていますが6例の間違いです。236例中6例なので2.5%ということになります。

現在はエンボスフィアを塞栓物質としてすでに250例以上を行いましたが更に合併症は少なくなっています。


大阪にてUAE施行



大阪にある病院に招聘されてUAEを行ってきました。 前もってMRIはCDで送っていただき適応を決定しており、UAE手技がどうなるかはイメージしていました。エンボスフィアを塞栓物質としたUAEもここ1年で230例を越えていわゆる“慣れて”きた頃になります。自動車の運転もそうですが、“慣れて”きたころが危なく、事故を起こします。 また新幹線で往復するわけですが、大阪観光ではなく施術です。行きの新幹線では車中でコーヒーだけにして早めに大阪入り、病院のそばで昼食を取り、予定手術時間より30分以上早く病院入りしました。自分の病院であれば血管造影装置からカテーテル、ガイドワイヤー、シリンジ、シャーレ、薬剤等に至るまで使い慣れたものがあり、何が起きても即座に使用できる状況下ですが、他院となるとそうは行きません。サッカーで言えば『away』での戦いと言うことに成ります。 UAEの進み具合を車中でイメージしているうちに名古屋、京都とあっというまに大阪着です。 早めに血管造影室入りをさせてもらい、血管造影装置からカテーテル、手術用手袋!に至るまでできるだけ詳細にチェックさせてもらいました。手術台の高さ調整やIIの高さ、角度などの調整は機種によって扱いが微妙に違ってきます。フットスイッチも微妙に違います。施術をイメージしながらできるだけチェックする、競技スキーで言えばインスペクションに当たりオーケストラではゲネプロに当たります。 技師さんには透視条件を7.5パルスに設定してもらい、手技を無事終了させることができました。モニターでの見え方が若干いつもの装置とは違ったため、確認造影を多めに行いましたが、1時間程度で手技は終了。筋腫がやや大きかったためエンボスフィアは平均の1.8倍ほど使用しましたが造影剤量、透視時間も想定範囲でした。 翌日には主治医の先生に電話をして患者さんの常態が落ち着いていることを確認しました。 皆様お疲れ様でした。




子宮筋腫に対するUAE

子宮動脈塞栓術(UAE)でもっとも大切なのは適応です。UAEの手技は左右の子宮動脈にカテーテルを挿入し、塞栓物質を流し込む。極めてシンプルです。たったこれだけのことです。ほとんどの女性が右と左にそれぞれ1本の子宮動脈があります。私は外来で患者さんに『UAEそのものはどうって事はありませんよ。大切なのはUAEをして患者さんがよかったと思うこと。つまり適応なんです。』とお話しています。ではどういった子宮筋腫が適応外なのか。 1.挙児希望で核出術が可能、もしくは核出術が妊娠出産に有利と思われる例 2.症状の乏しい子宮筋腫 3.大きすぎる筋腫(おおよそへその高さぐらいまでなら適応内) 4.10cmを越える粘膜下筋腫もしくは筋層内筋腫で粘膜面に近いもの(未産婦の場合は8cm) 5.LDHが高値で変性が著明な腫瘍 6.手術適応の付属器腫瘤がある などです。 上記にしたがって診察をした結果、2014年度は約320名の初診患者さんに対して196名にUAEを行いました。つまり60%がUAE適応と言うことになります。 初診患者さんはほとんどの方が他院で子宮筋腫と診断され、手術を勧められていました。この場合の手術とは全摘ですので子宮全摘と言われた患者さんの6割がUAE適応になる。裏を返せば4割は適応外ということになります。

エンボスフィアによる子宮動脈塞栓術の初期成績

2014年にエンボスフィアを塞栓物質として実施された子宮動脈塞栓術162例のうち術後造影MRIを施行し塞栓効果を判定された128例を対象 108症例は子宮筋腫、20症例は腺筋症合併もしくは腺筋症のみ UAE162例の手技的成功率 100% (子宮動脈の欠損や、選択的カテーテル挿入は可能であったが造影所見により塞栓することによるリスクがベネフィットを上回ると判断し塞栓物質を注入しなかった症例は除く。) 手技に要した透視時間の平均15.7分 1症例に使用したエンボスフィアの平均 500-700μm3.6V 700-900μm0.5V UAE1か月後の造影MRIによる病変部梗塞の評価 完全梗塞率85.2%   筋腫分娩3.9%   感染1例(感染筋腫の経膣的切除で完治) 異所性塞栓によると思われる臀筋障害1例(軽度の疼痛と違和感のみであり1ヶ月以内に症状消失) 不完全梗塞筋腫の増大による再治療 1例(腹腔鏡下子宮全摘術)